英語の「訛り」、インドとアラブ諸国で話される英語の特徴

英語の発音は国や地域によって微妙な違い(訛り)があるものです。インドやアラブ諸国でも、母国語の影響を受けた発音のクセや訛りが含まれがちです。

インドやアラブ諸国で話されている英語は、「r」の発音が独特だったり、子音が独特の音に変化したりする傾向があります。

インドも中東も英語がよく使われる土地柄です。英語圏でインドや中東の出身者と会話を交わす機会も多々あります。訛りについて最低限の知識を持っておくだけでも、聞き取りにくさに戸惑う場面はずっと減るでしょう。

インドやアラブ諸国で話される英語の特徴

インドの公用語はヒンディー語(ならびに英語)、アラブ諸国は多くがアラビア語を公用語としています。英語にもやはり公用語であるヒンディー語やアラビア語に少なからず影響されています。

インド訛りの英語と中東訛りの英語にはある程度の共通点が見いだせます。とりわけ顕著な特徴は、英語の発音をする際の「舌」の使い方です。

r はとにかく舌を巻いて発音される

「r」は英語でも舌を巻く要領で発音されますが、インドや中東の訛りでは極端といえるほどの巻き舌が発音される傾向があります。舌を巻き、さらに口をこもらせるような声です。

本来は r の音を特に発音せず長音記号のように機能する部分も、舌を巻くことで明示的な発音になる場合がままあります。たとえば garbage(/ˈɡɑːrbɪdʒ/)の語は、インド・アラブ諸国の訛りは「ガベージ」という風ではなくむしろ「ガルベジ」とカナ表記した方が近いような濃く強い発音になる傾向が顕著です。

もっとも、r の音で舌を巻く傾向は他の地域にも見られます。たとえばヨーロッパ圏で話される英語にも、程度の差こそあれ、舌を巻く印象に話し方は見受けられます。

インドで話される英語の特徴

インドで話される英語には独特の英語の訛りがあります。インド国内でも地域によって英語の発音が異なるといわれています。

インドで話される英語には、英単語の綴りのまま発音する、特定の子音を濁らせて発音する、といった特徴が見受けられます。

英単語の綴り通りに発音する

インド周辺では基本的に英単語を綴りの通りに発音する傾向があります。

そのせいもあってか、インドで話される英語の発音には 曖昧母音 /ə/ が用いられなかったりします。本来は /ə/ と発音する所を /aː/ などに置き換えて発音します。ちなみに /ə/ はschwa(シュワ)と呼ばれる英語独特の発音で、表記上は「a」もしくは「o」で綴られます。

また、一般動詞の過去分詞の語末などにつく「-ed」は、 /t/ と発音する場合も多々ありますが、インド訛りでは綴りの通り一律 /-d/ と発音される傾向があります。

たとえば talked は /tɔːkt/ のような発音が標準的ですが、インド英語においては talked の語末は /kt/ ではなく /kd/ になる場合が多々あります。

複数形の語末につく -s なども、/z/ の音が標準的といえる場面において綴りの通りに /s/ と発音する場合があります。たとえば dogs は /dɒɡz/ が標準的な発音ですが、インド訛りの英語では /daɡs/ と清音で発音されたりします。

「w」や「f」は濁音になる

インドで話される英語の特徴としては、日本語でいうところの清音が濁音に変化する、という傾向も挙げられます。w や f の音が /b/ や /v/ の音で発音されたりするわけです。

たとえば、 water は普通は /ˈwɑːt̬ɚ/ であり「ウォーター」のような発音ですが、強いインド訛りが入ると w に濁点がつく感じで「ヴォッタ」のような音に聞こえがちです。football が bootball(ブットボール)に聞こえそうな発音になったりもします。

語頭の「s」の手前「i」が足される

インドの中でも北インドの言葉の影響が色濃い訛りは s から始まる単語に i を付け足して発音する傾向もあります。style (スタイル)を istyle (イスタイル)のように読んでしまうわけです。訛りというか発音上のクセのようなものでしょう。

中東アラブ諸国で話される英語の特徴

アラブ諸国で話される英語にも特徴的な訛りがあります。

中東訛りの英語も「r」を発音する場合に舌を巻いて発音します。全体的に、喉を鳴らすように英単語を発音する傾向が顕著です。

加えて、ある種の子音を他の子音に置き換えるようにして発音されるパターンが見られます。

「p」が /b/ と発音される

アラブ諸国で話される英語では、「p」を /b/ に近い発音で読む場合があります。つまり日本語でいうところの半濁音が濁音になります。

もともと、アラビア語にはアルファベットの「p」に相当する音がなく、p の音は非常に発音しにくい音です。どうしても他の音(主に /b/)に寄ってしまうわけです。

sports や support のような語は、p が /b/ に変わる上に r が極端な巻き舌で発音されるため、油断すると元の語が何であるか分からなくなりがちです。

  • pepsi → bebsi
  • pat → bat
  • couple → couble
  • sports → sborts
  • support → subbport

「v」が /f/ と発音される

p → /b/ の置き換えと同様、v が /f/ で発音されることがあります。これも「v」に相当する音がアラビア語にはないことが要因です。

たとえば very は「フェリ」のように聞こえがちです。

日本語の感覚では very → 「ベリー」→ bery という風に b の音で大体される方が自然とも思えますが、どうもそういう風にはならないようです。