英語の「訛り」、ヨーロッパで話される英語の発音の特徴

英語は世界中で話されている国際言語といえますが、各国・各地域で話される英語は当該地域の母国語の影響を受けた「訛り」が少なからず含まれます。欧州諸国で話されている言語の多くは、英語と同じ系統に属するとはいえ、発音にはそれなりの差異があります。

発音を身に着ける際には標準的な正しい発音を学ぶべきですが、模範的な発音しかしらない状態では現場の英語を聞き取れないという場合も起こりえます。地域に根差した発音のクセを把握しておきましょう。

イタリア語訛りの英語の特徴

イタリア語圏で話される英語は、発音も多少イタリア語の影響を受けています。具体的には、子音に母音が加えられたり、/h/ の発音が無視されたり、あるいは余分に付け足されたりします。

/h/ の音が発音されない場合や余計に追加される場合がある

イタリア語訛りでは h の音をはっきりと発音されずに消失してしまう場合があります。たとえば how は標準的には /haʊ/ と発音しますが、イタリア語訛りでは /h/ が消失して「アウ」のような発音に近づきます。

  • house(/haʊs/)
  • how(/haʊ/)
  • hard(/hɑːd/)
  • horse(/hɔːs/)

h の音は必ず消失するとは限らず、むしろ h がない所に /h/ の発音が挿入される場合もあります。たとえば動詞 go などは語末に /h/ が加わって「ゴホォ」のような発音似聞こえることがままあります。

語末に母音を付け足して発音する

イタリア語は母音を含む音が多い言語です。特に単語の末尾を子音でなく母音で終わらせる語が多く、日本人にも比較的親しみやすく響きます。イタリア語訛りの英語も、語末に本来ないはずの母音が加えられてしまう傾向があります。

たとえば lot は、標準的な英語では語末が子音で終わりますが、イタリア語訛りでは語末に母音 o の存在を感じさせる、それこそ日本語で「ロット」(rotto)と発音する感覚に近いような発音になりがちです。

/r/ は舌を巻いて発音される

/r/ の発音はイタリア語に特徴的な巻き舌で発音されがちです。母音の直後の r は、標準的な英語では特に発音されませんが、イタリア英語では舌を巻いて r の音を明示するような発音になることがあります。

  • wrong(/rɒŋ/)
  • right(/rʌɪt/)
  • car(/kɑː/)
  • four(/fɔː/)

その他にもイタリアで話される英語には、英単語をそのまま綴り通りに発音したり、文章内の全ての文節を強めて発音する、といった特徴があります。

フランスで話される英語の訛り

/i:/ は /ɪ/ に変化する

フランスで話される英語においては、たいてい /i:/ は /ɪ/ に変化します。フランス語には i を表す発音は /ɪ/ のひとつしかないためです。したがって sheep(/ʃiːp/)と ship(/ʃɪp/)は全く同じ発音に聞こえてしまうことがあります。

/æ/ と /ɑ:/ は /a/ に変化する

フランス人が英語を話す場合、二重母音(長母音)である /æ/ と /ɑ:/ を短母音である /a/ に変化させて発音することがあります。

そのため、heart(/hɑːt/)は hat(/hat/)とほとんど同様の発音に変わります。hard も had と似たような発音、harm も ham と似た発音に変化します。

/r/ をふるえ音として発音する

フランスで話される英語では、/r/ はふるえ音として発音されます。

ふるえ音は喉の奥部、喉彦をふるわせながら発声する音です。フランス語特有にみられる発音です。

本来英語の /r/ を発音する場合は、口の手前側で舌先を使って発音しますが、フランス英語では口の奥部を使って発音します。

  • right(/rʌɪt/)
  • red(/rɛd/)
  • lorry(/ˈlɒri/)

その他にもフランスで話される英語には、イタリア英語と同様に、本来発音しない母音直後の r を発音する場合があります。

ドイツで話される英語の訛り

/θ/ と /ð/ は /s/ に変化する

ドイツで話される英語において、/θ/ と /ð/ は /s/ に変化して発音されます。ドイツ語には /θ/ と /ð/ にあたる発音がないためです。

例えば、three は /θriː/ と発音されるのではなく、/sriː/ と発音されているように聞こえることがあります。

  • three(θriː)
  • this(/ðɪs/)
  • those(/ðəʊz/)
  • third(/θəːd/)

/e/ と /æ/ との区別がない

ドイツで話される英語には /e/ と /æ/ の区別がない場合があります。

そのため例えば pet(/pɛt/)と pat(/pat/)の発音の区別が非常に難しく感じます。些細な違いですがドイツで話される英語特有の特徴であるので理解しましょう。

その他にもドイツで話される英語の特徴は、フランス英語と同様に二重母音(長母音)を短母音として発音することや、/w/ を /v/ に変化させて発音することなどがあります。

ロシアで話される英語の訛り

/ʌ/ と /ɑː/ を /a/ に変えて発音する

ロシアで話される英語には /ʌ/ と /ɑː/ を /a/ に変えて発音する、といった特徴があります。ロシア語には母音の数が少ないためです。

例えば heart(/hɑːt/)は本来、日本語の「ハート」に近い音で発声されます。ロシアで話される英語においては、heart を「小屋」を意味する hut(/hʌt/)とほとんど同じ音で発声されます。日本語の「ハット」に近い音です。

/v/ と /w/ の区別がない

ロシアで話される英語を聞くと、 /v/ と /w/ の区別がつかないことがあります。/v/ と /w/ の中間のような音に聞こえます。

例えば very(/ˈvɛri/)の発音は本来、日本語の「ヴェリー」に近い音に聞こえます。ですがロシア英語では /v/ と /w/ の区別があまりつかないため、濁らず「ウェリー」といった音として聞こえる場合があります。

walk(/wɔːk/)の発音もロシアで話される英語では、「ヴォーク」と /v/ の音が混じって聞こえることがあります。

その他にも、ロシアで話される英語には他の国と同様に /eɪ/ は短母音として発音する、r を発音する場合は舌を巻いて発音する、といった特徴があります。