平均的な日本人の英語スピーキング力が低い理由

日本人のスピーキング力は、もちろん個人差はありますが、海外滞在経験のない平均的な日本人に限ればやはり低いと言わざるを得ません。

スピーキング力は主に2つの要素に分けられます。ひとつ目は「表現したいことを論理的かつ流暢に英語で話す力」、ふたつ目は「正しく英語で発音する力」です。日本人はどちらも苦手という傾向があります。

たとえば学校の授業では、先生が読み上げる英語は十分に理解できる、文法に関するテストはすらすら解ける、しかし英語を使ってディスカッションしましょうという授業では無口になってしまって発言できなくなる、という生徒がいます。これはひとつ目の「表現したいことを論理的かつ流暢に英語で話す力」が育っていない典型例といえます。

また、海外旅行などで英語ネイティブや外国人英語話者と会話する際、伝えたい英語表現はきわめて簡単なフレーズのはずなのに、一向に相手が理解してくれないというケースが多々あります。これはふたつ目の「正しく英語で発音する力」が足りていない例です。

このような失敗談は多くの日本人が多かれ少なかれ体験しているところであり、これが英語のスピーキングに対する一種のコンプレックスにもなっています。

日本人のスピーキング力が育たない主な要因

ではなぜ苦手かということですが、それには3つの原因があります。

英語に触れる機会というのが極端に少ない

1つは日本人が日常で英語に触れる機会というのが極端に少ないことです。

一部、早期英語教育などを取り入れ、幼少期から英語の発音、英語でスラスラ話すための訓練をしている日本人もいますが、相当な覚悟で機会を与えない限り私たちが自然に英語に触れることはあまりありません。

発音に対する無関心

2つ目は学校教育での発音に対する無関心です。この頃スピーキング力を上げるため、コミュニケーションを重視した英語教育カリキュラムに変わりつつありますが、発音の矯正はいまだ重要視されていません。

英語と日本語の言語的な違い

3つ目として英語と日本語間で見られる言語的な違いがあります。さきほどlとrの違いが分からない日本人が多い事実に触れましたが、それはlとrという音の違いが日本語においては大切ではないからです。両者とも日本語では「ラリルレロ」であるため、普段はその違いを意識せずに生活しています。そしてこれが日本人特有のアクセントを生む原因でもあります。日本語と英語の音の違いこそが日本人の英語を日本人の英語らしくし、ネイティブにとって聞き取りにくいものにしています。

しかし、それは必ずしも悪いことではありません。中国人は中国人訛り、インド人はインド人訛りを話すように非ネイティブに多少の訛りがあることは仕方なく、それらの訛りにて免疫のないネイティブに言葉が通じないのはある程度仕方のないことです。しかし問題は確実に言葉の意味に影響してくるようなlとrといった音素の違いを区別できないところにあります。これらの音の違いが正しく発音されない限りはいつまでたってもネイティブに理解してもらえないでしょう。

スピーキング力が低いことは実際いくつかのデメリットを生みます。1つはビジネスの場で円滑なコミュニケーションが取れないことです。言いたいことを英語でスラスラ言えないとミーティングも滞ってしまいます。2つめは粗野な発音によって個人の印象が下がることです。例えば、地方の訛りの強い人と、NHKのアナウンサーでは後者のほうが知的な印象を受けます。つまり正しい発音ができるかどうかはその人のイメージにもかかわってくるのです。逆に言えば、正しい発音、そして言いたいことをすらすら英語で言えれば、その人はネイティブに良い印象を与え、円滑にコミュニケーションをとることができます。

日本人の英語力は主に学校教育で養われます。文法や文章読解能力、語彙力などを中心に学ぶことが多いといえるでしょう。こうした読み書きに関する英語能力は日本人も比較的高めです。

英語のアウトプット方面の能力は、とりわけスピーキング力を養う機会は日本人にとって貴重なために、コンプレックスを持っている人は少なくありません。一部英会話教室に通い、ネイティブによる英語レッスンを受けながらスピーキング練習を行っている日本人もいますが、通っていても週1回くらいなので、やはり多くはスピーキングのレベルを上げにくい環境にいると言えます。大学の講義で、英語のリーディングの課題を難なくこなし、ネイティブ教員の話す内容を理解できるのに、いざ英語を話せと言われると途端に黙ってしまう学生がいます。何を話したらいいかわからないという場合もありますが、話したいことが頭にあってもそれがうまく英語で表現できないという場合も多いです。